鑑賞記録。

マノエル・ド・オリヴェイラ。
主演はマルチェロ・マストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーヴの娘、キアッラ。
監督作品の常連、レオノール･シルヴェイラ、ルイス・ミゲル・シントラの出演も嬉しい、愛の不在の物語である。

本作も触れれば毀れそうな、感傷的な作品である為、レビューは割愛する。

「愛」とは、人を幸せにするものなのか、苦しめる物であるのか。
「個性」とは、「信仰」とは─。
様々な想念が千々に入り乱れ、上手く語れそうもない。

古風で濃密な生き様と、現代と云う時の流れの酷薄さとを唄に載せ、見事に融合させた名作である。

オリヴェイラ版を鑑賞。17世紀末に生まれた恋愛小説が現代劇へと大胆に変化を遂げて。なに食わぬ顔をしてライブシーンが登場。ピアノが笛が。良いアクセント。現代に沿った人間心理の観察を。テンポ良い切り替わり。堪らない質感。

本作は17世紀の古典恋愛小説を、道徳と精神性を断承しながら、時代のみを現在のパリに置き換えて物語る実験的な試みを、洗礼された映像で包み込んだ、恋愛映画の傑作とされているキアラ・マストロヤンニの気品あふれる美しさに魅了されるマノエル・ド・オリヴェイラの新境地に足した99年のポルトガル=フランス=スペイン合作映画で、この度DVDで初鑑賞したがよかった。とりわけシューベルトを3つのピアノ曲が印象残しカンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞した映画ならではの雰囲気がある。